来 歴

考える

世界のほんのはしくれである空について
考えきれなくなつてしまつた  人間の頭は
いつでもぐるぐると
何かわからないものがまつわつている頭の中で
あれはことによると雲かもしれないと
一度ならず考えてみたりするのだがわからない
途中まで考えてはやめてしまうので
頭の中ではつじつまの合わないことで一ぱいだ
あちらをひつぱるとこちらが足りないというように
雲が切れて不意に青空がひろがることがある
そこぬけの青空が人間の頭の中へもやつてくるといい
それをきらいであろうと好きであろうと
しまいにはどんなものでも
何もない空の青さになつてしまうのに
たとえばそのとき
森の中に一つだけ熟れている果実があるとしても
人間はそれを雲の一片だといい
世界はそんなに大きいのだなとなつとくするだろう
そして今  私たちが雲の一片について考えていることも
そんな言い方でなのかもわからないのだ

原文のまま。 っがつとなっています。

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